この記事で分かること
- 国が示した案の中身(対象・準備期間・始め方)
- 最初に対象になりそうな会社の数と、金額の目安
- まだ決まっていないこと
- 80〜100人の会社が、いまから準備できること
いまの決まり:納付金は100人を超える会社だけ
障害者雇用納付金は、法定雇用率を下回っている会社が、足りない人数1人につき月5万円を納める制度です(しくみと計算は障害者雇用納付金とは)。障害者雇用促進法の附則で、常用労働者100人以下の会社には「当分の間」納付金を求めない(あわせて調整金も支給しない)と決められています。
ただし、雇用の義務そのものは100人以下の会社にもあります。2026年7月に法定雇用率が2.7%になり、常用労働者37.5人以上の会社に、障がいのある方を1人以上雇う義務があります。
2026年10月21日に示された案
第144回の障害者雇用分科会で、事務局(厚生労働省)から、納付金の対象を100人以下の会社に広げる場合の「具体的なイメージ」が、検討の案として示されました。要点は3つです。
| 項目 | 案の中身 |
|---|---|
| 対象の規模 | 常用労働者80人以上100人未満(雇用の義務が2人になる規模) |
| 始め方 | 障がいのある方を1人も雇っていない会社から |
| 準備期間 | 十分な期間(例えば5年程度) |
2008年(平成20年)の法改正で、納付金の対象を300人超から200人超、100人超へと広げたときにも、それぞれ準備期間が置かれました。そのときは、新しく対象になった会社の納付金を、5年間は月4万円に下げる措置もありました。今回の案では、準備期間には触れていますが、金額を下げる措置には触れていません。
案のとおりなら、最初の対象は約4,200社
「100人以下にも納付金」と聞くと、多くの中小企業が一度に対象になるように感じます。資料では、40人以上100人未満の会社(約6.8万社)すべてに広げた場合の数字も出ていますが、案のとおりに絞ると、最初の対象はずっと少なくなります。
| 会社の範囲 | 社数(2025年6月1日時点) |
|---|---|
| 40人以上100人未満 | 67,885社 |
| そのうち80人以上100人未満 | 14,097社 |
| そのうち1人も雇っていない(不足2人) | 4,209社 |
1人も雇っていない80〜100人の会社は、雇用の義務が2人なので、不足2人です。いまの金額(月5万円)のままなら、2人 × 5万円 × 12か月 = 年120万円が目安になります。
「80人」は、2.5%で計算した線
80人という線は、法定雇用率2.5%で計算しています(80人 × 2.5% = 2人)。2026年7月からの2.7%で計算すると、雇用の義務が2人になるのは74.5人以上です(74.5人 × 2.7% ≒ 2.01人)。
法律で「80人以上」と人数で決めるのか、「雇用の義務が2人以上」と決めるのかで、対象の会社は変わります。資料の中でも「80人超100人以下」「80〜100人未満」と書き方が分かれていて、境目の人数はまだ決まっていません。法定雇用率は少なくとも5年ごとに見直すことになっているので、準備期間(案では例えば5年程度)のあいだに、また率が変わるかもしれません。いま70人台の会社も、他人事ではないと考えておくのが安全です。
まだ決まっていないこと
資料からは、次のことはまだ読み取れません。法律の案や省令が出たら、このページを更新します。
- そもそも広げるかどうか:資料は「適用拡大の是非」を論点にしていて、80〜100人未満の案は「仮に実施する場合」のイメージです。受け入れの体制が整わないまま雇うことになる、中小企業の経営が苦しくなる、という意見も資料に載っています。
- いつから数えるか:2008年の改正では、準備期間を法律の公布の日から数えていました(200人超は約1年半、100人超は約6年)。今回はまだ法律の案も出ていません。
- 1人だけ雇っている会社の扱い:「ゼロの会社から」とあるので、1人雇っている会社(不足1人)は当面対象外とも読めます。そうなると、0人と1人で年120万円(いまの金額のままの場合)の差がつくことになります。
- 「ゼロ」の数え方:短時間(週10〜20時間)で働く精神障がい・重度の方は0.5人と数えます。0.5人の雇用でも「ゼロではない」とするのか。月ごとに見るのか、1年で見るのか。
- 調整金との関係:いまの附則では、100人以下の会社は納付金も調整金もセットで外れています。対象になった会社が、多く雇ったときに調整金を受け取れるのか。
- 金額:月5万円は1992年(平成4年)から変わっていません。同じ資料で、納付金・調整金の額を、物価・賃金の推移や財政の健全性などを考えあわせて決める形に見直す案も出ています。
私たちの見方:5年を「待つ時間」にしない
この案のねらいは、障がいのある方を雇ったことがない会社に「1人目」を雇ってもらうことです。私たちが心配しているのは、納付金を避けるために、とりあえず1人を雇う動きが増えることです。
大阪・北摂で障がい福祉の現場を10年運営してきて、つまずく例には、任せる仕事が決まらないまま採用したケースがあります。任せる仕事がない、受け入れる部署が決まっていない、困ったときに相談する人がいない。そうなると、ご本人は居場所を失い、会社も「やっぱり難しい」と感じてしまいます(定着しない理由)。
反対に、5年あれば、1人目をきちんと迎える準備ができます。
- いまの人数を数える常用労働者の数(週20〜30時間の人は0.5人)と、2.7%での雇用の義務を確かめます(シミュレーター)。いま37.5人以上なら、すでに雇用の義務があります。
- 任せる仕事を探す部署ごとの仕事を書き出して、任せられる業務を洗い出します(業務切り出しシート・業種別の業務図鑑)。
- 受け入れる人を決める上司になる人、相談の窓口になる人を決めます(受け入れる上司へ)。
- 面接だけで決めない実習やトライアル雇用で、仕事と職場が合うかを確かめてから採用します(トライアル雇用と採用前の実習・助成金一覧)。
外部のサービスを使うときに
「1人目を急いで雇いたい」会社が増えると、働く場所や仕事をまとめて用意するサービス(いわゆる障害者雇用ビジネス)を使う会社も増えると考えられます。国は2026年8月の分科会で、こうした事業者に届出を求める規制の案も示しています。サテライトオフィスを運営する私たちも、対象になる見込みの事業者です。
外部のサービスを使うなら、雇用の数を満たすだけでなく、御社の仕事を任せ、御社の一員として働けるかを確かめてください。比べ方はサテライトオフィスの選び方と障がい者雇用の4つの形を比べるにまとめています。社内で雇える会社には、私たちはサテライトをおすすめしていません。
同じ資料では、労働局の認定を受けた事業者が企業の相談にのる「障害者雇用相談援助事業」について、実績を重く見る認定や、採用後の定着を重く見る助成への見直し、ハローワークが支援の必要な会社とつなぐ案も示されています。1人も雇っていない会社は、まず本社を管轄するハローワークに相談するのも一つの方法です。
大阪の会社の場合
- 大阪府で法定雇用率を達成している会社は41.4%(2025年6月1日時点・全国46.0%)で、全国でも低いほうです(大阪の法定雇用率の達成状況)。
- 雇用の相談は、本社を管轄するハローワーク(大阪市淀川区・東淀川区・吹田市はハローワーク淀川、豊中市・箕面市・池田市はハローワーク池田)です。
- 新大阪・東三国や北摂の会社なら、NEXTぷれいすが、業務の切り出しから採用、定着までお手伝いします。「うちは何人必要か」「どんな仕事を任せられるか」の整理からでも大丈夫です。
