この記事の答え
- 規制の案:働く場所や仕事をまとめて用意する事業者に、行政への届出を義務づけ、国のガイドラインに沿った運営を求める(努力義務)。禁止はしない(2026年8月に厚生労働省が審議会に示した案。法律はまだ変わっていません)。
- 利用する会社:毎年のロクイチ報告で、使っている事業者・働く場所・仕事の内容・今後の予定を報告する案。会社名は公表しない案。
- 問われるのは:任せている仕事が会社の役に立っているか。最後は会社の中で雇用できるか。
この記事で分かること
- 障害者雇用ビジネスとは何か、どれくらい広がっているか
- 国が何を問題にしていて、なぜいま動いているのか
- 事業者と、利用する会社に求められそうなこと
- いま利用している会社・検討している会社が確かめたいこと
障害者雇用ビジネスとは
障がいのある方を雇う会社に対して、働く場所(農園・サテライトオフィスなど)や仕事、日々の支えをまとめて提供するサービスを、国の資料では「いわゆる障害者雇用ビジネス」と呼んでいます。雇用契約を結ぶのは利用する会社で、働く場所が会社の外にあるのが、よくある形です。
厚生労働省が把握できた限りで、このサービスで働く障がいのある方は、2023年3月末の約6,600人から、2025年10月末には約11,100人に増えました(実際はもっと多い可能性が高い、と国の資料は注記しています)。業界団体(日本障害者雇用促進事業者協会)の会員へのアンケート(2026年4〜5月・24社が回答)では、農園やサテライトオフィスのほか、食品の製造や環境保全、雇用管理の助言(コンサルティング)を行う形など、業態がさまざまであることも分かりました。
| 業態 | 答えた事業者 | 利用している会社 | 働く障がいのある方 |
|---|---|---|---|
| 農園(屋外・屋内) | 5社 | 1,279社 | 8,638人 |
| サテライトオフィス | 11社 | 484社 | 2,213人 |
| その他(食品の製造・飲食店・環境保全など) | 6社 | 183社 | 761人 |
法定雇用率は2026年7月から2.7%に上がり、国の研究会も、こうしたサービスを使うニーズは中長期的に続くと見ています。だからこそ、国は「数」だけでなく「中身」を見ようとしています。
なぜ国が動いているのか
障害者雇用促進法は、障がいのある方が「経済社会を構成する労働者の一員として、職業生活においてその能力を発揮する機会を与えられる」ことを基本的な理念にしています(第3条)。法律が会社に障がい者の雇用を義務づけているのも、この理念にもとづいています。国の審議会でも、障がい者雇用の「質」で目指す姿として、会社にとっては障がいのある方の力を引き出して事業に生かすこと(戦力化)、ご本人にとっては成長・やりがい・貢献の実感が挙げられています。
国の資料は、障害者雇用ビジネスの中に、この理念から離れてしまうおそれがある形があるとして、次の3つを挙げています。
- 働く場所と仕事が、会社から切り離される会社の外で、会社の事業と関係のない作業をしていると、雇い主としての責任が薄くなり、「共に働く」という考え方から遠ざかります。
- 雇用の管理を、事実上まかせてしまう決まった作業だけが続き、成長の機会や、一人ひとりへの配慮が足りなくなることがあります。
- 仕事の成果が、会社で使われない例えば、つくったものが使われずに捨てられるような仕事では、雇用が「一方的なコスト」と受け止められ、働く方のやりがいも下がります。
2022年11月・12月には、衆参両院の厚生労働委員会の附帯決議で、政府に「事業主が、単に雇用率の達成のみを目的として雇用主に代わって障害者に職場や業務を提供するいわゆる障害者雇用代行ビジネスを利用することがないよう、事業主への周知、指導等の措置を検討すること」が求められ、研究会(2026年2月に報告書)と審議会で議論が続いてきました。
私たちは、この3つの指摘はもっともだと考えています。雇用率の数字を満たしても、ご本人が会社の一員として力を発揮できていなければ、ご本人にとっても、会社にとっても、もったいない状態です。障がいのある方が活躍して、会社が元気になる。その環境を会社の中につくっていくことが、障がい者雇用のいちばん大事なところだと思っています。
国が示している案
国の研究会の報告書(2026年2月)は、こうしたビジネスの大部分は明らかな法令違反ではなく、憲法が保障する経済活動の自由との関係で、禁止したり許可制にしたりすることには法制上の課題がある、としています。そのうえで8月の資料では、事業者に届出を義務づけ、国のガイドラインに沿って運営するよう努めてもらう案が示されました。
| 対象 | 案の中身 |
|---|---|
| 事業者 | 「障害者雇用援助等事業」(仮称)として法律で定め、行政への届出を義務づける。国のガイドライン(告示)に沿って運営する努力義務。必要に応じて、行政が報告を求め、指導・助言・勧告をする。働く場所の提供だけでなく、雇用の管理(採用・配置・育成など)への援助を仕事として続けて行う事業も含める(障害者就業・生活支援センターや、職業紹介だけの事業などは除く) |
| 利用する会社 | 毎年のロクイチ報告で、①使っている事業者(法人名・所在地)、②働く場所と人数(農園・サテライトなどの別、主な仕事、会社側の管理担当者)、③今後の利用予定(利用する期間を含む)を報告する。会社名は公表しない |
働く場所が分かれておらず、事業者が障がいのある方と直接関わらない形で、人事担当者などが助言だけを受ける場合は、報告はいらないとする案です。
ガイドラインに入りそうなことと、私たちの取り組み
案では、事業者向けのガイドラインに、次のようなことを入れる方向です。私たちも規制を受ける側です。いまの取り組みを国の案と並べると、次のようになります。
| ガイドラインの案 | NEXTぷれいすでは |
|---|---|
| 成果を、会社の事業で役立てる提案と支援 | 任せるのは御社の仕事です。担当者が御社の部署に伺い、毎日の仕事を見せていただいて、任せる仕事を一緒に決めます |
| 会社の仕事の中から、業務を切り出し、組み直す | 業務切り出しの支援から、求人の出し方・面接の同行まで、同じ担当者が伴走します |
| 最後は、会社の職場での雇用へ移る支援 | ゴールは御社の中での雇用(内製化)です。「この方なら本社で大丈夫」と思えた時点で、本社勤務や在宅との組み合わせへ進めます |
| 障がい者雇用にくわしい一定の資格者などを置き、スタッフに研修をする | 就労移行支援やハローワークの職業相談を長く経験した支援員が常駐しています(どの資格が対象になるかは、まだ決まっていません) |
| 取り組みを、年1回以上ホームページで公開する | まだ案の段階で、公開する項目も決まっていません |
ただ、資格のある人を置き、研修をしていれば雇用の質が上がる、とは限らないとも考えています。いちばん問われるのは、仕事の成果が、その会社で本当に役立っているかです。だから私たちは、御社の部署の仕事から任せる仕事を探し、求人の出し方まで一緒に考えるところから始めています。東三国のオフィスでは、単純作業を任せる予定だった方が、得意なプログラミングを生かして、社内のシステム開発を任されるようになった例もあります(導入事例)。
国の資料では、「有為に活用されている」かどうかは最後は会社自身が判断するものとしたうえで、もともと会社がしていた仕事を、障がいの特性に合わせて切り出し・分解・組み直している場合などは、一般に有為な活用と考えられる、という考え方が示されています。その仕事が事業に必要で役に立つことを、費用と見合う形ではっきり説明できる場合も同じです。また、会社が主体となって雇用の管理をし、成果が事業に役立っている形であれば、専門性の高い事業者の伴走を受け続けることは必ずしも否定されない、ともしています。
研究会では、働く方と会社の人事担当者のあいだで(必要に応じて事業者も入れた3者で)、合理的配慮の内容も含めて定期的に話し合えるようにすべきだという意見が出ました。8月の資料では、これを受けて、事業者が雇用の管理に直接関わっている場合は、3者で定期的に面談などをして、仕事の妨げになっていることの確認や合理的配慮の調整をすることが望ましい、とガイドラインに書く案が示されています(合理的配慮の責任は雇用する会社にある、とも整理しています)。私たちのところでは、ご本人から御社へ毎日日報が届き、支援員から週1回ご本人の様子をお伝えし、ご希望があれば月1回オンラインで面談しています。本社に一緒に伺って、本社の方と業務のミーティングをする機会もつくっています。
サテライトオフィスは、ずっといる場所ではない
案では、利用する会社向けのガイドラインに、一定期間使ったあとは、自社の事業の中で業務を切り出すなどして、ご本人の希望をふまえながら、自社の職場での雇用へ移していくことが望ましい、と書く方向です。報告する「今後の利用予定」も、仕事が会社の事業に役立っているかを確かめ、配置転換などを進めるためのものとされています。ここでいう「移行」は、働く場所を移すことだけではなく、仕事が会社の事業に役立つ形になること、配置や育成を会社自身が決めていくことも含めて考える、という案です。
私たちも、サテライトオフィスは一つのステップだと考えています。サテライトオフィスでのやり取りを通して、御社に「この方はこういう特性がある」「こういう伝え方だと安定する」を知っていただき、いずれ御社の職場で働けるようにする。それが私たちの目指す最終的な形です。移る時期は、ご本人と御社の準備に合わせて決めます(NEXTぷれいすの契約には、期間の決まりはありません)。私たちも規制を受ける側ですが、この方向には賛成です。国の案が目指す形は、私たちが目指してきた形に近く、障がい者雇用はこうあるべきだと考えています。
利用している会社・検討している会社が、いま確かめたいこと
いつ法律が変わるかは決まっていませんが、報告の項目の案を見れば、何を聞かれそうかの見当がつきます。いまのうちに、次のことを確かめておくと安心です。
- 任せている仕事:御社の事業の仕事か。成果は、御社で使われているか。
- 説明できるか:その仕事が、払っているお金に見合う形で御社の役に立っていると、社内で説明できるか。
- ご本人の成長:同じ作業だけが続いていないか。得意なことを生かせる仕事に広げられているか。
- 会社との距離:御社の社員と話す機会や、配慮について話し合う場があるか。
- その先:どれくらいの期間使い、いずれ御社の職場で働く道があるか。事業者がその手伝いをしてくれるか。
比べるときの項目はサテライトオフィスの選び方に、雇用の管理をまかせきりにする「代行」との違いは「代行」と「サポート」の違いにまとめています。
これからの予定
2026年11月時点では、国の審議会で議論が続いている段階で、法律の案は出ていません。2026年11月11日の第145回障害者雇用分科会では、「これまでの議論の整理」が議題になっています(厚生労働省の開催案内)。障害者雇用ビジネスへの対応も、これまでに議論された議題の1つです。案の中身が変わったり、法律の案が出たりしたら、このページを更新します。
この見直しの方向は、障がいのある方が会社の戦力として活躍する、という障がい者雇用の本来の姿に近づけるものだと、私たちは受け止めています。障がいのある方が社会に参加して活躍すれば、会社が元気になり、経済も元気になる。活躍できる環境が社会全体に広がれば、人手不足の解決にもつながると考えています。私たちは大阪・北大阪の会社とともに、「障がい者雇用は戦力になる」を一社ずつ形にしていきます。
