この記事で分かること
- 合理的配慮について、法律と国の指針で決まっていること
- 本人との話し合いの進め方と、「過重な負担」の考え方
- 身体・知的・精神・発達の障がい別の配慮の例と、職場で続けるコツ
合理的配慮とは:法律で決まっていること
障害者雇用促進法では、2016年4月から、事業主に次のことが義務づけられています。
| 場面 | 決まっていること | 条文 |
|---|---|---|
| 募集・採用 | 障がいのある方に、障がいのない方と同じ機会を与える。本人の申出を受けて、障がいの特性に配慮した必要な措置を講じる | 第34条・第36条の2 |
| 採用後 | 賃金・教育訓練・福利厚生などで、障がいを理由に差別しない。働くうえで支障になっている事情を改善するため、施設の整備や援助する人の配置などの措置を講じる | 第35条・第36条の3 |
| 進め方 | 措置は本人の意向を十分に尊重して決める。相談に応じる体制を整える | 第36条の4 |
| 例外 | 事業主にとって過重な負担になるときは、この限りでない | 第36条の2・3 |
2024年4月から、障害者差別解消法でも事業者の合理的配慮が義務になりました。ただし、会社が社員に対して行う配慮は、障害者雇用促進法のルールによります。雇用の場面では、2016年からすでに義務です。
本人との話し合いの進め方
国の「合理的配慮指針」では、配慮は本人と会社がお互いを理解しあう中で提供するもの、とされています。手順は次のとおりです。
- 支障になっている事情を確かめる採用前は本人からの申出を受けて。採用後は、障がいを知った時点で、職場で困っていることがないかを会社から確かめます。その後も必要に応じて定期的に確かめます。
- 本人と話し合う本人が具体的な配慮を言えないときは、会社からできることを示します。本人の意向を確かめにくいときは、就労支援機関の職員などに手伝ってもらうこともできます。
- 配慮を決めて、伝える方法がいくつかあるときは、本人の意向を尊重しつつ、会社が提供しやすい方法を選べます。過重な負担で実施できないことは、その旨と理由を本人に伝えます。
- 続けながら見直す仕事や体調は変わります。一度決めて終わりではなく、話し合いを重ねて調整します。
「過重な負担」の考え方
一律の線はなく、次の6つを総合的に考えて、個別に判断します。
- 事業活動への影響生産やサービスにどのくらい影響するか
- 実現の難しさ建物や設備、人の配置の面で、どのくらい難しいか
- 費用・負担の程度ほかの障がいのある社員の分も含めて考える
- 会社の規模
- 財務の状況
- 公的な支援の有無使える助成金などは、使う前提で考える
過重な負担に当たる場合も、本人と話し合い、過重にならない範囲でできることを講じます。なお、日常生活のための眼鏡や車いすを用意することは、求められていません。
障がい別の配慮の例
厚生労働省の「合理的配慮指針事例集」に載っている、実際に会社が取り組んでいる例の一部です。同じ障がいでも必要な配慮は人によって違うので、例はあくまで話し合いのきっかけにしてください。
| 障がい | 配慮の例 |
|---|---|
| 視覚障がい | 労働条件を口頭や読み上げで説明する。採用試験で文字を大きくする・音声ソフトや点字を使う・試験時間を延ばす |
| 聴覚障がい | 面接に手話通訳者などの同席を認める。業務の指示を筆談ボード・メール・音声を文字にするソフトで行う |
| 肢体不自由 | 面接の場所を入口の近くや1階にする。車いすでも使える机、高さを変えられる机を用意する |
| 知的障がい | 面接に支援機関の職員や家族などの同席を認める。最初は仕事の量を少なくし、慣れるにつれて増やす。図や写真、ふりがな付きのマニュアルをつくる。指示を紙に書いて渡す |
| 精神障がい | 通勤ラッシュを避けられる出退勤の時間にする。一人で静かに休める場所や時間をつくる。その日の作業の内容・範囲・かかる時間を毎日伝え、指示は一つずつ出す |
| 発達障がい | 「10回洗ったら次」のように具体的に指示し、「あれ」「それ」を使わない。音に敏感な方には耳栓やヘッドフォン、静かな場所。光に敏感な方には照明を減らす・サングラスを認める。面接や試験で、文字でのやりとりや時間の延長 |
福祉の現場から:配慮が続く職場、続かない職場
障がい福祉の事業所を10年運営し、自分たちでも障がいのある方を雇用してきた中で、配慮がうまく続く職場には共通点があると感じています。
- 「何をすればいいか」より先に「何に困っているか」を聞く:配慮の中身を会社が先に決めてしまうと、本人が本当に困っていることとずれることがあります。
- 配慮と期待をセットにする:配慮は「できないことを免除する」ことではなく、力を出せるようにするための調整です。任せる仕事と、期待していることも一緒に伝えます(「これしかできない」と決めつけない)。
- 一人の上司や一つの部署に任せきりにしない:会社全体で受け止める仕組みと、相談できる窓口をつくります(受け入れる上司へ)。
- 言葉にならないしんどさを拾う:特に精神障がいのある方は、「大丈夫です」と言っていても大丈夫でないことがあります。調子を伝える練習と、受け止める側の聞き方の両方が要ります(調子を崩しそうな社員への声かけ)。
東三国のサテライトオフィスでは、支援員が毎日の見守り(面談とモニタリング)でご本人の様子を確かめ、指示が伝わりにくいときは、ご本人に合うマニュアルを御社と一緒につくります。どんな配慮があれば強みを発揮できるかを、ご本人・会社と話しながら組み立て、会社に週1回お伝えしています(サテライトオフィス)。
サテライトオフィスと自社の雇用で、実際にしている配慮の例
NEXTぷれいすのサテライトオフィスや、ぷれいすGROUPで障がいのある社員を雇用する中で、実際にしている配慮の一部です(個人が分からないようにまとめています)。
- 口頭の指示が伝わりにくい方には、文字でチャットや手順書で指示を残し、あとから見返せるようにします。
- 一度にいくつも頼むと混乱しやすい方には、一つずつその日の仕事をスプレッドシートなどで並べ、終わったら次へ進む形にします。
- 続けて働くと疲れやすい方には、休憩をはさむ仕事の合間に短い休憩を入れて、1日を通して力を出せるようにします。
- 離れた会社とは、つなぎ方を決める本社とはオンラインでつなぎ、報告の時間や方法を決めておきます。
- 出社に不安がある方は、少しずつ在宅と出社を組み合わせ、慣れてきたら出社の日を増やします。完全に在宅だった方が、週1回出社できるようになった例もあります。
相談の窓口をつくる
指針では、会社は次のことをしておくよう求められています。
- 相談の窓口をあらかじめ決めて、社員に知らせる(外部の機関に任せることもできる)
- 相談した人のプライバシーを守り、そのことを社員に知らせる
- 相談したことを理由に解雇などの不利益な扱いをしないことを、就業規則などに定めて知らせる
話し合いで解決しないときは、都道府県労働局長による助言・指導・勧告や、調停の制度もあります(募集・採用についての争いは調停の対象外)。
大阪の会社の場合
- 合理的配慮や障がい者雇用の相談は、管轄のハローワーク(淀川区・東淀川区・吹田市はハローワーク淀川、豊中市・箕面市・池田市はハローワーク池田)や、大阪府の大阪府障がい者雇用促進センターでも受け付けています。
- 働く方ご本人の生活面も含めた相談は、地域の障害者就業・生活支援センター(大阪市・とよなか・すいた・豊能北など)が窓口になります。
- 新大阪・東三国や北摂の会社なら、NEXTぷれいすが部署に伺って、配慮の組み立て方や受け入れる社員の方への研修もお手伝いします(新大阪・東三国/北摂)。
社員が障害者手帳を持っているかを確かめる方法は「社員の障害者手帳、どう確かめる?」にまとめています。
