この記事で分かること
- 週の勤務時間で、法定雇用率の数え方と雇用保険がどう変わるか
- 給与を決めるときに、法律で決まっていること(最低賃金・差別の禁止)
- 定着につながる、勤務時間と給与の「ステップ」の決め方
勤務時間で変わること
法定雇用率の数え方
障がいのある社員を法定雇用率で何人と数えるかは、週の所定労働時間(契約で決めた時間)と障がいの種類・程度で決まります。
| 週30時間以上 | 週20〜30時間 | 週10〜20時間 | |
|---|---|---|---|
| 身体・知的 | 1人 | 0.5人 | 数えない |
| 重度の身体・重度の知的 | 2人 | 1人 | 0.5人 |
| 精神(手帳をお持ちの方) | 1人 | 1人(当分の間の特例) | 0.5人 |
精神障がいのある方は、週20時間以上30時間未満でも1人と数える特例があります(2023年4月から、当分の間)。そのため、まず週20時間台で始めて、慣れてから時間を延ばすという決め方が、雇用率の面でも、ご本人の負担の面でも取りやすくなっています。
雇用保険・社会保険
- 雇用保険:週20時間以上で、31日以上働く見込みがあれば加入します。法律の改正で、2028年10月からは週10時間以上に広がる予定です。
- 社会保険(健康保険・厚生年金):短い時間で働く方が加入するかどうかは、会社の規模や働き方の条件で変わります。くわしくは顧問の社会保険労務士にご確認ください。
何時間から始めるか
採用したあと、いちばん多い困りごとは「出勤が安定しないこと」です。最初から長い時間で始めて体調を崩すより、続けられる時間から始めるほうが、結果として早く戦力になります。
| 始め方 | 週の時間の例 | 向いている場合 |
|---|---|---|
| 短い時間から | 週20〜25時間(1日4〜5時間×5日) | しばらく働いていなかった方、体調の波がある方、新しい仕事を覚える最初の数か月 |
| フルタイムで | 週30時間以上 | 前の職場でフルタイムで働いていた方、出勤が安定している方 |
給与を決めるときに、法律で決まっていること
最低賃金は、障がいのある方にも適用される
最低賃金は、障がいのある方にも原則として同じように適用されます。大阪府の最低賃金は、2026年10月1日から時間額1,231円です(それまでは1,177円)。業種によっては特定(産業別)最低賃金も決められています。両方がかかるときは、高いほうの額以上を払います(2026年10月時点では、大阪の特定最低賃金はいずれも1,231円より低い額です)。
最低賃金の減額の特例は、限られた場合だけ
精神または身体の障がいにより、仕事をする能力が著しく低い場合に、都道府県労働局長の許可を受けて、最低賃金より低い額にできる「最低賃金の減額の特例」という制度があります。ただし、障がいがあるだけでは許可されません。障がいがその仕事に直接、著しく影響していることがはっきりしている場合に限られ、申請は労働基準監督署を通して行います。
障がいを理由に、不当に差をつけてはいけない
障害者雇用促進法では、賃金の決め方、教育訓練、福利厚生などについて、障がいがあることを理由に、障がいのない方と不当に差をつけることを禁じています(第35条、2016年4月から)。仕事の中身や責任、勤務時間が違えば給与が違うことはありますが、「障がい者雇用の枠だから」という理由だけで低くすることはできません。
実際の給与の決め方
本当に企業さんによってさまざま、という答えになってしまいますが、基本的には最低賃金からスタートして、正社員と同じように働けるようになったら、正社員と同じくらいの金額まで。かなり幅は広いです。ただ、働く側としては、アルバイトでも次のステップ、また次のステップと、せめて次のステップまでが目標としてはっきり分かると、やる気も続くし、定着もしやすいと思います。(代表 磯隼斗)
給与の金額そのものよりも、「何ができるようになったら、どう変わるのか」が見えていることが、定着には大きく効きます。
定着につながる「ステップ」の決め方
勤務時間・仕事の幅・働く場所・給与を、段階に分けて決めておく方法です。下は考え方の例です。
| 段階 | 勤務時間 | 仕事 | 働く場所 | 給与・雇用形態 |
|---|---|---|---|---|
| 1. 慣れる | 週20時間台 | 決まった手順の仕事(ずっとある仕事) | サテライトオフィスなど、支援のある場所 | 時給(最低賃金から)・有期の契約 |
| 2. 広げる | 週30時間へ | 判断の入る仕事、ためておく仕事も | 同じ | 時給を上げる |
| 3. 任される | 週30時間以上 | 一つの業務の担当、後輩への引きつぎ | 本社・在宅との組み合わせも | 契約の見直し、月給への切りかえ |
| 4. 一緒に働く | 会社の決まりどおり | 部署の一員として | 本社など | 正社員への登用も |
次の段階に進む目安は、出勤が安定していること、仕事の流れが分かっていること、会社がご本人の得意・苦手を分かっていることの3つです。NEXTぷれいすでは、サテライトオフィスで働く方が本社勤務に移るときも、この3つを目安にしています(サテライトから在宅・本社勤務へ)。
有期の契約が更新されて通算5年を超えると、ご本人の申し込みで期間の定めのない契約に変わります(労働契約法の無期転換のルール)。ステップを決めるときは、この点も合わせて考えておくと安心です。
給与を決める5つの手順
- 仕事の中身と責任を決めるどの仕事を、どこまで任せるか。業務の切り出しで決めた内容がもとになります。
- 社内の同じような仕事と比べる同じような仕事をしているパート・契約社員の給与と比べ、障がいがあることだけを理由に低くしていないかを確かめます。
- 最低賃金を確かめる事業所のある都道府県の最低賃金(大阪府は時間額1,231円)を下回っていないか。業種の特定最低賃金も確かめます。
- ステップを決める勤務時間・仕事の幅が広がったら、どう見直すかを決めます。
- 求人票と契約書に書く始めの条件と、見直しの考え方を書いておきます。
よくある間違い
| 間違い | どうするか |
|---|---|
| 週20時間より短くして、法定雇用率に数えられなかった | 身体・知的障がい(重度でない方)は、週20時間未満だと数えません。数え方の表で確かめてから時間を決めます。 |
| 「障がい者枠だから」と、同じ仕事の人より低い時給にした | 障がいを理由に不当に差をつけることは禁じられています。差をつけるなら、仕事の中身・責任・時間の違いで説明できるようにします。 |
| 通院や体調のことを考えずに、勤務時間を決めた | 通院の日に休みや時間の調整ができるかは、合理的配慮として話し合っておくことの一つです(合理的配慮)。 |
| いつまでも最初の条件のまま | 仕事が増えたのに条件が変わらないと、やる気が続きません。見直しの時期(半年ごと・契約の更新時など)を決めておきます。 |
| 最初から長い時間にして、出勤が安定しなかった | 続けられる時間から始め、慣れてから延ばします。 |
求人票に書いておくこと
- 勤務時間の幅:「週20〜30時間(相談に応じます)」のように、始め方を相談できることを書くと、応募しやすくなります。
- ステップ:「勤務時間・仕事の幅に応じて時給を見直します」(実績がある場合は)「本社勤務・正社員登用の実績あり」など、先が見える一文を。
- 配慮と支援:支援員がそばにいる、通院の相談ができる、など。合理的配慮や支援が伝わる求人には応募が集まりやすくなります(求人と面接のコツ)。
大阪の会社の場合
- 大阪府の最低賃金は、2026年10月1日から時間額1,231円です。給与を見直すときは、大阪労働局の発表で最新の額を確かめてください。
- 求人は、事業所の地域を受け持つハローワーク(淀川区・東淀川区・吹田市はハローワーク淀川、豊中市・池田市・箕面市はハローワーク池田)に出せます。ハローワークや、届出をしている職業紹介の紹介で雇うと、特定求職者雇用開発助成金などの対象になる場合があります(助成金一覧)。
- NEXTぷれいすでは、切り出した仕事に合わせて、勤務時間・給与・ステップの決め方もご一緒に考えます。