引きこもりから、もう一度働くまで|社会復帰の小さなきっかけとしてのB型Column

公開:2026年11月7日
引きこもりの状態から、もう一度働くまで。「こうすれば必ずうまくいく」という方法は、残念ながらありません。それでも、タイミングと状況が重なったときに、小さなきっかけで一歩を踏み出せることがあります。そのきっかけは、「家までお迎えが来る」「お昼ごはんがおいしい」くらいの、ハードルの低いものでいい。豊中市と大阪市西淀川区で就労継続支援B型「2ndぷれいす」を運営する私たちは、そう考えています。
| この記事の答え |
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|---|---|
| B型を使うには |
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この記事は、国の調査や制度の資料と、2ndぷれいすの現場で見てきたことをもとに書いています。
この記事の目次
ひきこもりは、めずらしいことではありません
内閣府の「こども・若者の意識と生活に関する調査」(2022年11月に調査、2023年3月公表)では、ひきこもりの状態にある人(広い意味)の割合は、15〜39歳で2.05%、40〜64歳で2.02%でした。全国では約146万人と推計され、厚生労働省は「15歳から64歳の50人に1人」と紹介しています。
※この調査の「広い意味のひきこもり」は、ふだん「趣味の用事のときだけ外出する」「近所のコンビニなどには出かける」「自室からは出るが、家からは出ない」「自室からほとんど出ない」状態が6か月以上続いている人です(仕事をしている人などはのぞきます)。
その状態になってからの期間は、15〜39歳でも40〜64歳でも、約半数が3年以上、20%以上が7年以上でした。そうなった「いちばん大きな理由」も、15〜39歳では「退職したこと」14.9%、「人間関係がうまくいかなかった」14.0%、「新型コロナの流行」12.3%、「病気」10.5%、「中学校時代の不登校」9.6%と、ばらばらです。
理由が人それぞれなら、抜け出し方も人それぞれだと、私たちは考えています。家で過ごした時間の長さや、そうなった理由で、ご本人を責める必要はありません。
「こうすれば必ず」はない。でも、きっかけで一歩は進める
ご本人もご家族も、いちばん知りたいのは「どうすれば、また外に出られるようになるのか」かもしれません。正直にお伝えすると、「こうすれば必ず解決する」という方法はありません。
現場で運営していて感じるのは、タイミングと状況が重なったときに、きっかけがあると、人は一歩進めるということです。2ndぷれいすに来る方には、相談支援専門員(相談員さん)に「少しでもお仕事に関わることをしておいたほうがいいよ」と勧められたのがきっかけ、という方が多くいます。通っている間に、前の職場からもう一度声がかかり、それが次の一歩になった方もいます。きっかけの形は、本当にさまざまです。
国の調査で、ひきこもりの状態にある15〜39歳の方が「相談先に求めること」を見ると、多かったのは「相手が同じ悩みを持っている、持っていたことがある」36.8%、「無料で相談できる」36.1%、「相手がカウンセラーなど心理学の専門家である」31.9%、「匿名で相談できる」29.9%でした。最初の一歩には、気軽さと安心できる相手が大切なのだと、数字からも感じます。
だから私たちは、きっかけを大きなものにしないようにしています。「働く」「社会復帰」と考えると、足がすくんでしまうこともあります。その前に、「家を出る理由」が一つあればいい。そう考えています。
きっかけは「お迎え」「おいしいお昼」くらいでいい

2ndぷれいすでは、通うこと自体のハードルを下げることを大切にしています。
- 家までお迎えが来ます:ご自宅やご指定の場所まで、車でお迎えに行きます。車の中でも、スタッフに何でも話せます(送迎できる地域は送迎エリア)。
- おいしいお昼ごはんがあります:スタッフが毎日手作りする、日替わりの昼食です。体調がすぐれない日も「ご飯だけでも食べにおいで」と声をかけています。
- 週1日・1日1時間から:最初は少しだけで大丈夫です。慣れてきたら、少しずつ日数や時間を増やします。
- お仕事は、できるところから:工程を細かく分けて、「これならできそう」から始めます。
「そんな理由で通っていいの?」と思うかもしれません。いいんです。お迎えが来るから、とりあえず車に乗ってみる。お昼がおいしかったから、次の日も行ってみる。そのくり返しが、少しずつ生活のリズムになっていきます。
もちろん、居心地がいいだけで終わる場所でいいとは、私たちも考えていません。送迎や昼食は、あくまで通うきっかけです。その先で、できることを少しずつ増やしていく。「居場所」と「成長」の両方を大切にしています(2ndぷれいすの想い・特徴)。1日の流れや昼食の様子は1日の流れ・昼食・イベントで紹介しています。
通えていることが、前に進んでいるしるし
長く家で過ごしてきた方にとって、決まった日に家を出て、どこかへ通うこと自体が、大きな一歩です。私たちは、通えていること=前に進んでいることだと考えています。毎週通えている。今週は1日増やせた。そうした実感が、「自分にもできた」という自信(自己肯定感)につながっていくのを、現場で何度も見てきました。
そのために、2ndぷれいすでは毎日の関わりを大切にしています。
- 通所できた日は、「来てくれてありがとう」から始めます。
- 朝の「おはよう」に、その人だけへの一言をそえます。良いところや、変わってきたところを具体的に伝えます。
- 帰りぎわには「あなたが来てくれると、私たちもうれしいから、明日も来てね」と伝えます。
- 休みが続くときは、「なんで休んだの」ではなく「最近どう?」と、話しやすい雰囲気で話を聞きます。
「顔が見たいから、また明日も来てね」と言ってもらえるのがうれしくて、その声かけがあるから、がんばって通えている。
2ndぷれいすに通っている方(通っている人の声より)
毎月の研修(講義)では、公認心理師が、睡眠・食事・運動と心の関係や、落ち込みそうなときの考え方などをお伝えしています(研修プログラム)。生活が少しずつ整っていくことも、前に進む力になります。
新しい人とのやりとりが、気持ちを動かす
家の中だけで過ごしていると、話す相手が家族だけ、という日が続きます。通う場所ができると、スタッフや、ほかの利用者さんとのやりとりが生まれます。私たちは、この新しい人とのやりとりの刺激が、気持ちや意欲に良い影響を与えていると、現場で感じています。
ほめられることと脳の関係を調べた研究もあります(自然科学研究機構 生理学研究所の発表)。同じ研究グループは以前、人にほめられると、お金をもらったときと同じ脳の部分「線条体」がはたらくと報告しています。2012年には、健康な大人48人が指でキーを順に押す練習をした実験で、ほめられた人は次の日により上手にできたと発表しました。ただし、これは「ほめられること」を調べた研究です。人と関われば、だれでも元気になると言い切れるものではありません。
人と話すのが苦手な方も、もちろん大丈夫です。無理に会話に入ってもらうことはありません。スタッフのほうから少しずつ声をかけていくうちに、楽しそうに話してくれるようになる方もいます(B型作業所に通えるか不安な方へ)。西淀川では、月に1回のイベントを楽しみにして「その日はほかの予定を休んで、こっちに行きたい」と言ってくれる方が増えました。
2ndぷれいすで、これまでに何度も起きてきたこと
長く家で過ごしていた方が、通うことをきっかけに、一歩ずつ前に進んでいく。2ndぷれいすでも、そうした場面がこれまでに何度もありました。ここでは、ステップアップの事例で紹介している2つのお話を、短くお伝えします(ご本人が特定されないよう、内容の一部を変えています)。題名では「もう一度働く」と書きましたが、これまで働いたことがない方も同じです。
約20年ひきこもっていた方が、就職して1年以上
高校2年生のころから約20年、ひきこもりの生活をされていた方です。研修で、心の調子には睡眠・栄養・運動が大きく関わっていることや、楽になる考え方を学ぶうちに、少しずつ毎日の生活が変わっていきました。できるお仕事が増えるにつれて自己肯定感も上がり、B型で3〜4年を過ごしたのち、通所が安定して、ぷれいすGROUPのスタッフとして雇用。今は就職して1年以上が経とうとしています。
家にこもりがちだった方が、もう一度働く決断をするまで
体と心の調子を崩して仕事を離れ、長く家で過ごしていた方です。来られたときは、「一般就労を目指したい」というタイプではありませんでした。通ううちに以前の会社から声がかかり、スタッフと面談を重ねて、最後はご本人が「頑張ってみます」と決めました。
どちらも、来た日から何かが大きく変わったわけではありません。通うことを続ける中で、少しずつ「もう一歩やってみよう」と思えるようになったのだと、私たちは受け止めています。もちろん、就職だけがゴールではありません。B型に通い続けながら、自分らしく暮らすことも、大切な選択です。
若者の就労支援・ひきこもりの相談先(大阪・豊中)
相談先は、B型だけではありません。ご本人の状況や、そのときの気持ちに合うところを選んでください。どれも、いい道です。一つ目が合わなければ、次を試してもかまいません。どこから始めても、遠回りではないと私たちは考えています。
| ひきこもり地域支援センター | ひきこもりに特化した、行政の相談窓口です。2018年4月までに、全国すべての都道府県と指定都市(67自治体)に置かれました。ご本人だけでなく、ご家族も相談できます。大阪では、大阪府ひきこもり地域支援センター(電話相談。大阪市・堺市以外にお住まいの方)と、大阪市ひきこもり地域支援センター(電話のほか、LINEの相談もあります)があります。 |
|---|---|
| 市町村の若者の相談窓口 | 豊中市には、おおむね15〜39歳の若者とご家族のための若者支援総合相談窓口があり、ひきこもりや、働くことへの不安などを相談できます。 |
| 地域若者サポートステーション(サポステ) | 働くことに悩む15〜49歳の方の就労を支える機関です。厚生労働省の委託を受けた民間団体などが運営し、全国179か所(2025年4月時点)にあります。個別の相談は無料で、コミュニケーション講座やジョブトレ(就業体験)などもあります。近くのサポステはサポステ・ネットで探せます。 |
| こころの相談・医療機関 | 心や体の不調が続くときは、医療機関も相談先です。大阪市では、各区の保健福祉センターでも、こころの相談ができます。 |
| 就労継続支援B型 | 障がいのある方が、雇用契約を結ばずに、自分のペースで働ける福祉サービスです。通う場所ができ、お仕事をした分の工賃も受け取れます(就労継続支援B型とは)。 |
※窓口の名前や受付の方法は変わることがあります。ほかの市町村の窓口は、厚生労働省のひきこもりVOICE STATION(全国の相談窓口)で探せます。
B型を使うには:2025年10月からは、先に就労選択支援
B型は、障がい福祉のサービスです。対象は、障がい(精神・知的・発達・身体・難病など)のある方で、使えるかどうかは、お住まいの市区町村が決めます。障害者手帳がなくても、医師の診断書などで利用できる場合があります。ひきこもりの状態にあることだけでは、B型の対象にはなりません。まずは相談員さんや、市区町村の障がい福祉の窓口、事業所に相談してみてください。
そして2025年10月から、B型を新たに使う方は、原則として先に「就労選択支援」を利用することになりました。
- 就労選択支援とは:実際の作業や面談を通して、得意なこと・苦手なこと、自分に合う働き方を一緒に整理する障がい福祉サービスです。期間は原則1か月です。
- 使わなくてもよい方:50歳以上の方、障害基礎年金1級を受けている方、働いた経験があり、年齢や体力の面で一般企業で働くことがむずかしくなった方などは、就労選択支援を使わずにB型を利用できます。
- 近くに事業所がないとき:近くに就労選択支援の事業所がない場合や、利用まで待つ期間がある場合は、就労移行支援事業所などのアセスメントを経てB型を利用できます。
例外に当たるかは、市区町村が決めます。
長く家で過ごしてきた方にとって、いきなり「ここに通う」と決めるのは、勇気がいることです。就労選択支援は、通う場所を決める前に、1か月ほどかけて自分に合う働き方を確かめられる期間です。私たちは、これも一歩を踏み出しやすくするしくみの一つだと考えています。
2ndぷれいすは、B型の事業所で、就労選択支援も行っています(毎月3〜4名が利用)。2ndぷれいすに通うことが前提ではありません。アセスメントの結果、ほかの事業所や一般就労が合っていれば、そちらをおすすめし、つなぐお手伝いをします。くわしくは就労選択支援、利用の条件はB型の利用条件・対象者、手続きと利用料(多くの方が0円)はご利用の流れ・料金をご覧ください。
ご家族の方へ
ご家族にとっては、「このままで大丈夫だろうか」という心配が続く毎日だと思います。声をかけてみたり、そっと見守ったり、ご家族なりに考えて関わってこられたはずです。この記事は、これまでのご家族の関わりを否定するものではありません。
きっかけは、ご本人のタイミングと重なったときにやってくると、私たちは現場で感じています。ご本人のペースを大切にしながら待つことの大変さは、これまで待ってこられたご家族が、いちばんよくご存じだと思います。私たちも、ご本人のペースに合わせて関わります。
ご本人がまだ動けない段階でも、ご家族が今日からできることがあります。
- 送迎できる地域かを確かめる:お住まいの地域まで車でお迎えに行けるかは、送迎エリアで確かめられます。
- ご家族だけで相談する:ひきこもり地域支援センターは、ご家族からの相談も受け付けています。2ndぷれいすでも、お問い合わせで「相談したい」「ご家族」を選んでいただければ、ご家族だけのご相談を受け付けています(無料)。受給者証をまだお持ちでない段階でも大丈夫です。
- ご家族向けのページを読む:「ずっと通えるか」「人間関係は大丈夫か」など、ご家族からよくいただく心配へのお答えを、ご家族の方へにまとめています。
見学は、ご本人だけでも、ご家族や相談員さんと一緒でも大丈夫です。
まずは見学で、雰囲気を確かめてください
2ndぷれいすは、豊中市と大阪市西淀川区にあります(拠点一覧)。見学のときの送迎もご相談ください。言葉では伝わりにくい雰囲気は、来てみるのがいちばんです。見学だけでも大丈夫です。
よくある質問
引きこもりの状態でも、B型に通えますか?
ひきこもりの状態にあることだけでは、B型の対象にはなりません。B型は、障がい(精神・知的・発達・身体・難病など)のある方のための福祉サービスで、使えるかどうかはお住まいの市区町村が決めます。障害者手帳がなくても、医師の診断書などで利用できる場合があります。2025年10月からは、新たに使う方は原則として、先に就労選択支援を利用します。まずはご相談ください。
何年も家にいました。毎日通えるか不安です。
2ndぷれいすは、週1日・1日1時間からでも始められます。ご自宅やご指定の場所まで、車でお迎えに行きます。慣れてきたら、少しずつ日数や時間を増やしていきます。
人と話すのが苦手でも大丈夫ですか?
大丈夫です。無理に会話に入ってもらうことはありません。スタッフのほうから、少しずつ声をかけていきます。
障がいの診断がない場合は、どこに相談すればいいですか?
ひきこもり地域支援センター(大阪府・大阪市など)、豊中市の若者支援総合相談窓口(おおむね15〜39歳)、地域若者サポートステーション(15〜49歳)などがあります。心や体の不調が続くときは、医療機関に相談するのも一つの方法です。
家族だけで相談してもいいですか?
はい。ひきこもり地域支援センターは、ご家族からの相談も受け付けています。2ndぷれいすのお問い合わせでも、ご家族の方からのご相談を受け付けています。
出典
- 厚生労働省 社会・援護局地域福祉課「ひきこもり支援施策について【行政説明基本資料】」(2023年)(p.4 推計146万人・50人に1人、p.8 広い意味のひきこもりの割合と定義、p.9 いちばん大きな理由・相談先に求めること。いずれも内閣府「こども・若者の意識と生活に関する調査」(2023年3月31日公表)をもとに厚生労働省が作成)
- 厚生労働省「令和5年版 厚生労働白書(概要)」(p.11 ひきこもり状態になってからの期間)
- 厚生労働省「ひきこもり支援に関する取組」(ひきこもり地域支援センターの設置、50人に1人)
- 大阪府「大阪府ひきこもり地域支援センター」、大阪市「「ひきこもり」でお悩みの方へ」、豊中市「若者支援総合相談窓口」(それぞれの公式ページ。2026年11月7日に確認)
- 厚生労働省「地域若者サポートステーション」、サポステ・ネット「サポステとは」
- 文部科学省・厚生労働省「特別支援学校等における就労選択支援の取扱いについて」(2025年5月15日)(p.3 就労選択支援の対象者・B型の利用対象・期間)
- 自然科学研究機構 生理学研究所「「"褒められる"と"上手"になる」ことを科学的に証明」(2012年11月8日)
※2026年11月7日時点の情報です。制度の内容や窓口は変わることがあります。くわしくはお住まいの市区町村の障がい福祉の窓口や、相談支援専門員にご確認ください。
お問い合わせください
