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傷病手当金とは?

「最近、体調が悪くてお仕事を長くお休みすることになりそう…。
これからの生活費、どうしよう」
そんな不安をかかえていませんか?
会社員やパートで働いている方が、病気やケガで仕事を休まなければならなくなったときに、
生活を支える大きな味方になるのが「傷病手当金」です。
傷病手当金は、健康保険(社会保険)に入っている方が、
業務外の病気やケガで仕事を休んだときに、収入の一部を補ってくれる公的な保障制度です。
厚生労働省のホームページにも次のように記載されています。
「被保険者が病気やケガの療養のために仕事を休み、
事業主から十分な報酬が受けられない場合に、生活を保障するための制度」
(出典:厚生労働省「協会けんぽ・傷病手当金」 https://www.kyoukaikenpo.or.jp/g3/sb3040/sb3030/ )
つまり、「病気で仕事を休まないといけないけど、
給料が出ない、減る」そんなときに、安心して治療や療養に専念できるようにする為のお金なのです。
目次
対象者
傷病手当金を受け取れるのは、次のような条件を満たす方です。
- 健康保険(社会保険)に加入している被保険者
(会社員や公務員、一定のパート・アルバイトの方が該当します) - 業務外(プライベート)の病気やケガが原因で仕事を休む場合
(労災に該当する仕事中のケガは対象外で、労災保険の対象になります)
なお、健康保険の被扶養者(専業主婦や子供)は対象外ですので注意が必要です。
支給を受けるための条件
実際に「傷病手当金がもらえる」ためには、以下の4つの条件をすべて満たす必要があります。
- 業務外の病気やケガの療養のための休業であること
例えば、うつ病や適応障害、腰痛やがんなど、
業務とは直接関係ない原因で休む場合です。 - 仕事に就くことができないこと
医師の診断書で「就労不可」とされる必要があります。 - 連続して3日間休んだあと、4日目以降も休んでいること(待機期間)
「3日間の待機」を経て、4日目以降から支給が開始されます。
3日間は連続している必要があり、有給休暇を取得していても数えられます。 - 休業期間中に給与が支払われていないこと、または給与が減少していること
給与が一部出ていても、傷病手当金より少ない場合は差額が支給されます。
このように、ただ「会社を休んだから」ではなく、
医師の診断や待機期間、給与状況など、いくつかの条件がそろってはじめて支給されます。
支給される金額と期間
では、実際にどれくらいの金額がもらえるのでしょうか?
■ 支給額
- 傷病手当金は「直近の標準報酬日額 × 2/3」の金額が、1日あたり支給されます。
(標準報酬日額=健康保険で決まっている月収を30日で割った金額)
例えば、月収30万円なら
- 標準報酬日額:30万円÷30日=約1万円
- 支給額:1万円 × 2/3 =約6,666円/日
■ 支給期間
- 最長で「支給開始日から1年6か月間」です。
ただし、連続して支給されるわけではなく、
途中で復職して再び休職した場合も、この1年6か月の範囲内で支給されます。
申請の流れ
「傷病手当金の申請ってなんだか難しそう…」
そんなふうに感じる方も多いですが、実際には流れを知っていればスムーズです。
ここではステップごとに分かり易くお伝えします。
まずは、会社(総務や人事部など)に「傷病手当金を申請したい」と伝えてください。
健康保険組合や協会けんぽへの申請には、
会社が記入する欄がありますので、必ず会社に一度相談するのが大事です。
次に、申請書(傷病手当金支給申請書)を用意します。申請書には3つの記入箇所があります。
- 自分で記入する欄(住所や氏名、休んだ期間、給料の状況など)
- 事業主が記入する欄(会社が記載)
- 医師が記入する欄(病気で働けないと証明する部分)
ここで大事なのが、医師に「就労不能」の診断をきちんと書いてもらうこと。申請はだいたい1か月単位で行い、月ごとに医師に書類を書いてもらう必要があります。
すべて揃ったら、健康保険組合や協会けんぽに提出。
通常は提出から1か月ほどで口座に振り込まれます。
不備があると返戻され再提出になるため、会社と相談しながら確実に進めることが重要です。
申請時の注意点
申請するときに気をつけたい点をまとめました。
- 診断書は必須
医師が「就労不可」と認めていないと申請ができません。 - 医師の証明は月ごとが多い
そのため、月ごとに医師に診断書欄を書いてもらう必要があります。 - 締め切り(時効)に注意
傷病手当金の請求には2年の時効があります。もらい忘れを防ぐため、早めに手続きをしましょう。 - 再申請が可能
途中で一度復職し、再び同じ病気で休職した場合も、1年6か月の範囲内で再度受給できます。
働きながら受け取れる?
「少し元気になってきたし、短時間だけでも働いてみようかな…」
でも同時に、「傷病手当金って、少しでも働いたら全部もらえなくなるのかな?」と
不安になる方も多いです。
このテーマはとてもよく相談を受けます。
結論から言うと
就労した場合は原則としてその日は「就労可能」とみなされ、
傷病手当金の対象外になります。
ただし、実際は少し複雑で、場合によっては働きながら一部受け取れる場合もあります。具体的に見ていきましょう。
【基本】働くとその日は支給対象外
傷病手当金は、「働けない状態を保障する制度」です。
そのため、働いた日(就労日)は「働ける状態」と判断され、
その日分の手当金は支給されません。
たとえば週5日働いていた人が病気で休職し、週2日だけ短時間勤務した場合、
- 働いた2日間は傷病手当金は支給されず、
- 休んだ3日間は通常通り支給対象
となります。
【例外】差額支給のしくみ
ただし、「短時間勤務や軽作業をして賃金を得たけれど、
その賃金が傷病手当金より少なかった場合」はどうでしょう?
この場合は、
- その賃金と傷病手当金との差額を支給してもらう
ことができます。
これを「調整支給」といいます。
例えば、
- 1日あたりの傷病手当金=7,000円
- その日短時間働いてもらった給料=4,000円
この場合、差額の3,000円が傷病手当金として支給されます。
つまり、働きながらも生活を補填してもらえる形になるのです。
【注意】判断は健康保険ごとに個別
「どのくらいなら働いてもいい?」という線引きは、各健康保険組合や協会けんぽが慎重に判断します。
内容によっては、
- 軽作業でも頻度や仕事内容によって認められない
- 逆に、就労可能性が高いとみなされ支給停止になる
こともあるので注意が必要です。
迷ったら必ず、
- 健康保険組合(または協会けんぽ)
- 会社の総務・人事担当者
に相談するようにしましょう。
【焦らず回復を最優先に】
多くの方が「家計が心配だから少し無理をしてでも働きたい」と思われますが、再び体調を崩してしまっては本末転倒です。
傷病手当金は、本来しっかり療養するための制度です。「焦らなくても大丈夫、治す時間をもらったんだ」と思って、今はしっかり身体と心を休めてくださいね。
まとめ
傷病手当金は、病気やケガで仕事を長くお休みすることになったときに、とても心強い制度です。
「治るまでは働かないといけない」と無理をして体調をさらに悪化させる前に、ぜひ活用を検討してみてください。
そして、もし復職後に再び体調が不安定になってしまったときは、私たちのような就労移行支援事業所でのサポートも選択肢の一つです。
「また働きたいけど、自信がない」「不安が大きい」そんなお気持ちがあるときは、一度ご相談くださいね。あなたのペースで、安心してお仕事を続けていくお手伝いをさせていただきます。
▶ 参考
- 厚生労働省「傷病手当金」
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000188411.html - 全国健康保険協会(協会けんぽ)
https://www.kyoukaikenpo.or.jp/g3/sb3040/sb3030/