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不安障害の症状と原因、職場での対応方法を解説

不安障害とは?

私たちは日常生活の中で、「不安」な気持ちを感じることがあると思います。たとえば、プレゼンの前に緊張したり、初めての職場でドキドキしたり。こうした一時的な不安はごく自然な反応です。

しかし、何のきっかけもないのに強い不安に襲われたり、不安のせいで日常生活に支障をきたしてしまう状態が続くと、「不安障害(ふあんしょうがい)」と呼ばれる精神的な不調の可能性があります。

不安障害は、心だけでなく体にもさまざまな影響を及ぼす病気です。決して「気の持ちよう」ではなく、適切な理解と支援が必要です。

不安障害の種類と症状

不安障害にはいくつかのタイプがあり、それぞれに特徴的な症状があります。

パニック障害

突然、強い不安発作(パニック発作)に襲われ、動悸や息切れ、めまい、胸の痛みなどの身体症状が出ます。「このまま死んでしまうのでは」と感じるほどの強い恐怖が特徴です。

社交不安障害(社会不安障害)

人前で話す、会議で発言する、上司と話すなどの社会的な場面で、極端な緊張や不安を感じてしまいます。「失敗したらどうしよう」「笑われたらどうしよう」といった恐怖が強く、人との関わりを避けるようになります。

全般性不安障害

特に理由がないのに、常に何かが不安で落ち着かない状態が続きます。将来のこと、お金のこと、健康のことなど、あらゆることに過度に心配し、疲弊してしまうことがあります。

強迫性障害(強迫神経症)

「手を洗わないと不潔になる」「火を消し忘れたかも」などの強いこだわりや不安から、同じ行動(手洗い・確認など)を繰り返してしまいます。自分でも「やりすぎだ」と分かっていてもやめられないのが特徴です。

PTSD(心的外傷後ストレス障害)

過去のショックな出来事(事故、災害、暴力など)によるトラウマが原因で、不安やフラッシュバック、悪夢などが続く状態です。

不安障害の主な原因

不安障害の原因はひとつではなく、いくつかの要因が重なって発症すると考えられています。

1. 脳内の働きの乱れ

不安や恐怖をコントロールする神経伝達物質(セロトニンやノルアドレナリンなど)のバランスが崩れることで、不安を感じやすくなることがあります。

2. 性格傾向

几帳面、真面目、完璧主義の人は、ストレスを内に抱えやすく、不安障害を発症しやすい傾向があるといわれています。

3. 過去の体験やストレス

いじめ、家庭環境、過去の失敗体験などが心の中で影響を及ぼし、不安に敏感になる場合があります。また、仕事や人間関係による慢性的なストレスも原因に繋がります。

4. 遺伝的要因

家族に不安障害やうつ病の人がいる場合、遺伝的な影響で発症リスクが高まることも報告されています。

治療法

不安障害は、適切な治療を受ければ多くの方が回復できます。以下のような治療が一般的です。

1. 薬物療法

抗不安薬や抗うつ薬(SSRIなど)を用いて、脳内の神経伝達物質のバランスを整えます。医師の指導のもと、徐々に症状を和らげていきます。

2. 認知行動療法(CBT)

不安を引き起こす考え方のクセや行動パターンを見直す心理療法です。「過剰に心配していないか」「現実的な考え方に置き換えられないか」を一緒に整理していきます。

3. 環境調整と休息

生活リズムの安定、過度なストレスの軽減、安心できる人との関係づくりも重要です。場合によっては休職や療養も検討されます。

不安障害の方が職場で注意しておくポイント

仕事をする上で、次のような点に気をつけると、自分の心を守りやすくなります。

  • 無理をしすぎない:苦手なことを1人で抱え込まず、早めに相談しましょう。
  • 生活リズムを整える:寝不足や体調不良は不安を悪化させやすくなります。
  • 完璧を目指さない:「できる範囲でやればいい」と思える柔軟さを持つことが大切です。
  • 「今ここ」に集中する:過去や未来を考えすぎず、目の前のやるべきことに意識を向けましょう。

不安障害について職場への伝え方や配慮事項

不安障害を抱えている方にとって、働く環境はときに大きなストレスの要因になることがあります。特に、「人に知られたくない」「迷惑をかけたくない」という気持ちから、職場でひとりで抱え込んでしまう方も少なくありません。しかし、必要な配慮を受けながら、無理せずに働くことは決してわがままではありません。自分自身を守るためにも、信頼できる相手に状況を伝えることは大切な選択肢のひとつです。

伝えるかどうかは「自分で選んでいい」

まず大前提として、不安障害があることを職場に伝えるかどうかは「義務」ではなく「自由」です。無理に伝える必要はありませんし、職場に迷惑をかけているわけでもありません。ただし、「仕事がしんどい」「自分のペースで働けない」と感じる場合は、ほんの少しの配慮で状況が大きく改善することもあります。

伝えるときのポイント

伝える際には、できるだけ落ち着いたタイミングで、信頼できる上司や人事の担当者に話すことをおすすめします。すべてを話す必要はなく、「こんな場面で困りやすい」「こういう配慮があると助かる」というように、「病名」よりも「具体的な困りごとと解決策」を中心に伝えると、相手にも理解してもらいやすくなります。

たとえば、

  • 人前で話すと強い不安を感じる(→プレゼンや会議での発言を減らしてもらう)
  • 緊張しやすく集中が続かない(→業務量の調整や休憩の提案)
  • 突発的な対応が苦手(→業務の進め方にゆとりをもたせてもらう)

こうした内容を伝えるだけでも、心の負担はかなり軽くなるはずです。

会社側にお願いできる配慮の例

会社側にお願いできる配慮には、次のようなものがあります。

  • 人前での発言機会を減らす(社交不安がある場合など)
  • 緊張する業務を段階的に任せてもらう
  • 業務量を調整し、こまめな休憩を許可してもらう
  • 静かな作業環境を整えてもらう
  • 必要に応じてリモートワークを検討する

すべてを一度に整えるのは難しいかもしれませんが、少しずつでも配慮を得られれば、働きやすさは確実に変わっていきます。

不安障害の方が受けられる就労支援

不安障害を抱える方でも、安心して働くための支援制度があります。

1. 就労移行支援

障害者総合支援法に基づいた制度で、企業への就職を目指す方をサポートする福祉サービスです。訓練内容には以下のようなものがあります。

  • ビジネスマナー、PCスキル訓練
  • グループワークや対人練習
  • 体調管理や生活習慣の支援
  • 面接練習や履歴書作成支援

2. 精神障害者保健福祉手帳の取得

症状が継続している場合、「精神障害者保健福祉手帳」を取得することで、就職支援や雇用助成、通院費助成などのサポートを受けやすくなります。

3. 障害者雇用枠での就職

障害特性に配慮した職場環境で働ける可能性が高まり、安定した雇用に結びつきやすくなります。

まとめ

不安障害は、決して「甘え」や「気のせい」ではありません。脳やこころの働きが一時的にバランスを崩しているだけです。適切なサポートを受ければ必ず回復に近づきます。

誰にでも不安はありますが、「不安に振り回される」のではなく、「不安と上手につきあう」ことが大切です。

ひとりで抱え込まずに、家族・医師・支援機関・職場の人たちと連携しながら、自分らしく働く道を少しずつ築いていきましょう。

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