お役立ち情報USEFUL
適応障害とは?
目次
適応障害とは
適応障害とは、ある特定のストレス(環境や人間関係の変化、職場でのトラブルなど)にうまく対応できず、気分や行動に様々な問題があらわれる状態です。ストレスがきっかけで心身のバランスが崩れ、「抑うつ気分」「不安感」「イライラ」「涙が出る」「遅刻や欠勤が増える」など、日常生活や仕事に支障が出るのが特徴です。
うつ病との違いとして、ストレスの原因が比較的はっきりしていること、原因から離れれば症状が軽くなる傾向があることが挙げられます。
厚生労働省のサイト「こころの耳」でも、適応障害は職場のメンタルヘルスの代表的な問題の一つとして紹介されています。
適応障害の主な原因
適応障害は、ある意味「誰にでも起こりうる」心の不調です。原因となるストレスは人によって様々で、例えば以下のようなものが多くみられます。
- 職場の環境変化
部署異動や上司・同僚との人間関係の悪化、ハラスメント、仕事量の増加など。 - 家庭や生活環境の変化
結婚、離婚、転居、家族の病気や介護、子育ての悩み。 - 経済的問題や将来への不安
借金、失業、収入減少、進学や就職へのプレッシャー。 - 災害や事故などの突発的な出来事
こうしたストレスが長引いたり、
本人の負担の許容範囲を超えたときに、適応障害として症状が現れやすくなります。
適応障害になりやすい人の傾向
適応障害はストレスの大きさだけでなく、その人の「受け止め方」や「性格傾向」にも影響されます。例えば、以下のような特徴がある人は、適応障害を発症しやすいと言われています。
- 真面目で責任感が強い
仕事を完璧にやろうと抱え込みやすい。 - 人に頼るのが苦手
周囲に相談できずに、一人で抱え込みがち。 - 不安が強く、考え込む傾向がある
- 環境の変化に敏感で、慣れるのに時間がかかる
こういった性質は決して悪いものではありません。むしろ職場で信頼されやすい人柄とも言えますが、それが自分を追い詰める要因になることがあります。
治療法
適応障害の治療の柱は「ストレス要因から距離を置くこと」と「ストレスにうまく対処する力をつけること」です。具体的には以下の方法があります。
環境調整
最も大切なのは、原因となっているストレスから距離を置くことです。場合によっては職場の配置転換や休職が必要なこともあります。「頑張ればなんとかなる」と無理を続けると、うつ病へ移行するリスクが高まります。
精神療法(カウンセリング)
臨床心理士や精神科医との面談を通じて、気持ちの整理をしたり、ストレスの受け止め方を少しずつ変える練習(認知行動療法)を行います。
薬物療法
抗不安薬や睡眠薬が一時的に使われることがあります。ただし適応障害そのものを治す薬はなく、主に症状を軽くして回復をサポートするためのものです。
適応障害の方が職場で注意しておくポイント
適応障害の方が働き続けるためには、以下のような点を意識することが大切です。
- 「できる範囲」を大事にする
無理に頑張りすぎず、仕事量や働き方を調整しましょう。 - 生活リズムを崩さない
特に睡眠不足は心のバランスを崩しやすいので注意が必要です。 - こまめに休憩を取る
疲れを溜め込まず、短時間でも気持ちを切り替える時間を作ることが大切です。 - 早めにサインに気づく
「最近寝つきが悪い」「涙が出やすい」「遅刻が増えた」といったサインは無視しないようにしましょう。
適応障害について職場への伝え方や配慮事項
「適応障害かもしれないけど、職場に話すのはちょっと気が重い…」
そんなふうに感じる方はとても多いです。精神疾患は外からは分かりにくいので、理解されるかどうか不安になりますよね。
けれども適応障害は、ストレスが原因となることが多く、業務内容や職場の環境により症状が悪化することもあります。だからこそ、職場でどのように伝えるか、どんな配慮を受けるかがとても大切です。
どこまで伝えるべき?
職場に病気を伝えるかどうかは、個人の自由です。プライバシーは守られるべき権利なので、必ずしもすべてを話す必要はありません。ただし、適応障害は「一定の状況や業務が負担になって症状が強まる」ケースが多いため、まったく何も伝えないでいると、結果的に仕事を続けにくくなる場合もあります。
そのため、自分が安心して働ける環境を整えるために、最低限「体調上、こんなことを配慮してもらいたい」という部分を共有しておくのが現実的です。
主治医の診断書や意見書を活用
「どこまで話せばいいのか分からない」ときは、主治医に相談して診断書や意見書を書いてもらう方法があります。
例えば
- 短時間勤務(時短勤務や週の労働日数の調整)
- 残業や急な勤務変更の抑制
- 業務内容の一部変更
- 定期的な産業医面談
など、医師が職場に対して推奨する配慮を明記してくれることがあります。
これらを人事や上司に提出することで、医療的根拠をもって説明できるのでスムーズです
産業医・人事との面談で配慮を調整
復職や配置転換、勤務時間の調整などは、産業医や人事担当と面談しながら進めます。ここでも医師の意見書があれば大きな助けになります。
面談のときは「どんな業務が負担になりやすいのか」「どの程度のストレスで調子が悪くなるのか」など、具体的に伝えられると職場も対応しやすいです。話しにくい場合はメモを書いて持って行ったり、支援機関(就労移行支援や相談支援事業所)のスタッフに同席してもらう方法もあります。
合理的配慮は法律で義務づけられています
職場には、働く人が障害や病気による困難を抱えている場合、それを解消するための「合理的配慮」を行う法的義務があります。
これは、厚生労働省が示す「障害者差別解消法」や「職場における心の健康づくり指針」に基づくもので、精神障害も対象です。
合理的配慮とは例えば、
- 配慮した勤務時間や業務内容
- 定期的な面談や相談の場を設ける
- 休職復帰プログラム(リワーク)への参加許可
といったものです。
伝えるのが不安なときは
「体調のことを話すと不利になるのでは?」と心配な方も多いです。確かに職場により理解度は様々ですが、無理を続けて症状が悪化し、長期休職になってしまうリスクを考えると、ある程度早めに伝えて調整した方が結果的に自分を守れます。
また最近ではハローワークや地域若者サポートステーションなどで「職場への説明をどうすればいいか」の相談にも乗ってもらえます。支援者が職場と一緒に調整してくれるケースも多いので、一人で抱え込まず活用してください。
適応障害は、周囲に理解を得ながらストレスを調整することがとても大切な病気です。自分のペースで働き続けるためにも、職場には最低限の情報を伝え、無理のない範囲で働き方を一緒に考えてもらいましょう。
適応障害の方が受けられる就労支援
「このまま仕事を続けられるか不安…」という場合は、以下のような公的な支援制度やサービスを利用できます。
就労移行支援
厚生労働省の障害福祉サービスで、一般就労を目指してビジネスマナーやPC訓練、面接練習、職場体験などが受けられます。適応障害でも医師の診断があれば利用可能です。
就労継続支援A型・B型
体調に合わせて段階的に働くリハビリ的な制度です。A型は雇用契約を結ぶ形、B型は雇用契約なしで作業訓練を中心に行います。
ハローワークの専門相談
ハローワークには精神保健福祉士や就職支援ナビゲーターがいて、障害者雇用の求人紹介や職場定着のアドバイスを行ってくれます。
自立支援医療(精神通院)
精神科への通院費用を原則1割に軽減してくれる制度です。治療と就労準備を経済面から支えます。
精神障害者保健福祉手帳
適応障害でも、症状や通院状況によっては手帳を取得できる場合があります。これにより障害者雇用枠での応募や職場での配慮、公共料金の割引、税控除などを受けやすくなります。
地域若者サポートステーション(サポステ)
厚生労働省が全国に展開している無料の就労支援です。原則15歳~49歳の方が対象で、「人と話すのが不安」「どんな仕事が自分に合うか分からない」というところからでもOK。
カウンセリングやコミュニケーション講座、職場体験などを通して、一緒に自分らしい働き方を探せます。
地域生活支援センター・相談支援事業所
各市区町村に設置されている相談窓口です。生活面の悩みや医療、福祉、仕事のことなど、幅広く相談できます。
「どんな福祉サービスが使えるのか分からない」「どこに相談したらいいのか迷う」そんなとき、福祉の専門職が一緒に考えて手続きもサポートしてくれます。
障害者職業センター(高齢・障害・求職者雇用支援機構)
職業リハビリテーションの専門機関です。心理職やキャリアコンサルタントが「職業適性評価」「職場適応訓練」を行い、自分にどんな仕事や環境が合うのか一緒に探してくれます。
職場復帰に向けた支援プログラム(リワーク)を実施しているセンターもあり、安心して就労準備が進められます。
精神科デイケア・リワークプログラム
通院している病院で受けられる復職支援です。集団プログラムの中で、生活リズムを整えたり、ストレスへの対処を練習したりします。
特にリワーク(職場復帰)プログラムは厚生労働省の指針でも推奨されており、安心して仕事に戻る準備ができます。
生活訓練(自立訓練)
「いきなり働くのはちょっと…」という方に、日中活動を通じて生活リズムを整えたり、人と関わる練習をしたりする福祉サービスです。
就労の前段階として利用するケースが多く、将来に向けた土台作りにピッタリです。
まとめ:一人で抱え込まずに相談を
適応障害は決して珍しい病気ではありません。むしろ多くの人が「限界を超えてしまったとき」に起こす心のブレーキともいえます。
「自分が弱いからこうなった」と自分自身を責める必要はありません。
行政や医療機関、福祉サービス、職場の産業医などに頼りながら、一歩ずつ回復に向けて進んでいけるといいですね。