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双極性障害とは?

双極性障害(双極症)とは?

双極性障害(そうきょくせいしょうがい)は、以前は「躁うつ病」とも呼ばれていた精神疾患のひとつです。この病気の特徴は、「躁状態」と「うつ状態」という、正反対の気分の波を繰り返すことです。
例えば、あるときはとても元気でアイデアが止まらない、眠らなくても活動的に動き回る一方、しばらくすると、何をするのも億劫になり、ひどく落ち込んでしまう。このように気分が極端に上下し、それが日常生活や仕事、人間関係に大きく影響を及ぼします。
厚生労働省によると、日本国内での有病率は0.2〜0.7%程度とされており、決して珍しい病気ではありません(参考:「こころの病気を知るための情報・資料」厚生労働省)。

双極性障害の症状(躁状態とうつ状態)

躁状態の特徴

  • 気分が異常に高揚する
  • 睡眠時間が短くても元気
  • 話し続ける、アイデアが止まらない
  • 自信過剰になり、無謀な行動を取る(多額の買い物や借金など)
  • 怒りっぽくなったり、攻撃的になることもある

うつ状態の特徴

  • 気分の落ち込み、興味や喜びの喪失
  • 疲労感や集中力の低下
  • 食欲や体重の変化
  • 自責感や絶望感
  • 死にたいという思いが強くなる

このように、躁とうつはまったく異なる状態ですが、どちらも日常生活に深刻な影響を与えます。

うつ病との違い

双極性障害とうつ病は、似ているようで大きな違いがあります。うつ病では「気分の落ち込み」が中心で、躁状態はありません。一方、双極性障害では気分の高揚(躁)と落ち込み(うつ)の両方が交互に現れます。
この違いは治療方針にも関わる重要なポイントで、躁状態を見落としてうつ病と誤診されると、抗うつ薬が躁転(そうてん:うつ状態から急に躁状態になること)を引き起こしてしまうことがあります。
正確な診断のためには、過去のエピソードや家族の病歴なども丁寧に確認する必要があります。

主な原因

双極性障害の原因は完全には解明されていませんが、以下のような要因が関与していると考えられています。
脳内の神経伝達物質(ドーパミンやセロトニンなど)の異常

  • 遺伝的な要因(家族に精神疾患のある人がいる場合、発症リスクが高まる)
  • 強いストレス(就職、結婚、出産、別れなどのライフイベント)
  • 睡眠リズムの乱れ

複数の要因が複雑に絡み合い、発症に至るとされています。

治療法

双極性障害の治療は「薬物療法」と「心理社会的支援」がメインです。

薬物療法

  • 気分安定薬(リチウム、バルプロ酸など):躁・うつの波を抑える
  • 抗精神病薬(オランザピン、クエチアピンなど):躁状態や不安を抑える
  • 抗うつ薬:慎重に使用されます(躁転リスクがあるため)

心理社会的支援

  • 認知行動療法:思考の歪みに気づき、バランスの取れた考え方を習得
  • 家族療法:家族と連携し、病気の理解とサポート体制を整える
  • 睡眠や生活リズムの調整:特に重要です

職場で注意しておくポイント

双極性障害を持つ方にとって、職場で安定して働き続けるには「無理をしすぎない」「自分の変化に気づく」「生活リズムを整える」など、日常的なセルフケアと職場環境の調整が最も大切なことです。

まず特に注意したいのは、躁状態のときに仕事を過剰に引き受けてしまう傾向です。気分が高揚し「自分ならできる」と感じやすくなるため、過剰な業務量を抱えたり、結果的に周囲とのトラブルに発展したりするケースもあります。無理を重ねてしまうことで、のちに反動として重いうつ状態に移行することがあります。そのために「余力を残す働き方」を意識することが大切です。

また、生活リズムを整えることは再発防止の基本です。特に「睡眠の質と量」は、躁状態・うつ状態のどちらにも深く関係しています。睡眠不足は躁状態の引き金になりやすくなり、逆に長時間寝すぎると気力の低下に繋がります。早寝早起きを大切にしましょう。

ストレスマネジメントも重要です。日々の業務で疲れやストレスを感じたときには、こまめな休憩や、好きな音楽を聴くなどの「小さなリフレッシュ」を取り入れることで、心のバランスを保つ助けになります。

さらに、自分自身の変化に気づく力=セルフモニタリングも大切です。「最近しゃべりすぎている」「アイデアが止まらない」「夜眠れない」など、いつもと違うサインに気づいたら、それは体からの「注意信号」かもしれません。症状が悪化する前に、かかりつけ医や支援者に相談することが早期対応につながります。

職場への伝え方や配慮事項

職場に自分の病状を伝えるかどうかは、非常に悩ましい問題です。プライバシーの観点から言えば、無理に話す必要はありませんが、職場で「合理的配慮」を受けるためにはある程度の開示が必要です。
伝える際には、以下のような内容を整理するとよいでしょう。

  • 双極性障害という診断名(医師の診断書や意見書があるとスムーズです)
  • 必要な配慮内容:例)通院のための勤務調整、残業の制限、ストレスの少ない配置など
  • 症状が出そうなときのサインと対応策:例)気分が高ぶり始めたときには作業を一時的に減らしてもらう など

これらは、厚生労働省の「心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援の手引き」でも、「復職支援における職場との連携や調整」が不可欠であると強調されています。

伝えるタイミングとしては、復職や新しい職場に就く直前の「業務内容や働き方の調整時期」が望ましいとされています。可能であれば、産業医や職場の人事担当と三者での面談などを設け、必要なサポート体制を明確にしておくと安心です。

利用できる就労支援

双極性障害の方が利用できる主な就労支援は以下のとおりです。

  1. 就労移行支援
    ・双極性障害の方が「安定した状態」であれば十分対象となります。
    ・面接練習、ビジネスマナー、PC訓練なども含まれるため、復職や再就職前の準備に最適です。
  2. 地域若者サポートステーション
    ・原則15歳〜49歳が対象で、特に「社会的孤立」や「ひきこもり傾向」がある若者に適しています。
    ・双極性障害のある若年層の社会参加の第一歩として有効です。
  3. ハローワーク(精神保健福祉士)
    ・精神障害者雇用トータルサポーターによる支援もあり、障害特性に応じた職場紹介や応募書類の相談が可能です。
  4. 障害者手帳・障害者雇用枠
    ・双極性障害の診断により、精神障害者保健福祉手帳(2級〜3級)が交付されることがあります。
    ・これにより、法定雇用率の対象となる障害者雇用枠での応募や職場での合理的配慮が受けやすくなります。
  5. 就労継続支援A型・B型
    ・A型は体調が比較的安定していて、継続的に働ける方に向いています。
    ・B型はより体調に波のある方に適しており、無理なく日中活動に慣れるステップとして使えます。
  6. 精神科デイケア・リワークプログラム
    ・特に双極性障害の方は「再発予防」が重要。復職支援型リワークでは、病状の振り返りやストレス対処スキルの習得が行えます。
  7. 自立支援医療(精神通院)
    ・治療の継続が前提の制度ですが、経済的負担の軽減に大きく役立ちます。
  8. 障害者職業センター
    ・「職業準備性」の評価や「職場適応訓練」などがあり、働く前の不安の整理や段階的なスキルアップに適しています。
  9. 地域生活支援センター・相談支援事業所
    ・福祉サービスのコーディネート役として非常に重要。医療・就労・生活の全体を見渡しながら支援してくれます。
  10. 生活訓練(自立訓練)
    ・就労準備の土台として、生活リズムの安定・人との関わりの練習などに活用されます。
  11. 若者向け民間支援(例:サポステ等)
    ・双極性障害を抱える若者でも、状況に応じて参加できる柔軟なプログラムが多くあります。

まとめ

双極性障害は、気分の波が大きく、日常生活や仕事に多大な影響を与える病気です。しかし、早期の診断と適切な治療、そして周囲の理解があれば、安定した生活や仕事も十分に可能です。
自分の病気をきちんと理解し、無理をしないように、周囲と協力しながら日々を過ごすこと。それが、双極性障害とともに歩んでいく第一歩となります。

参考文献・資料

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